2026.09.21/ CODE VEIN公式ブログ
開発者インタビュー:拡張DLC『Mask of Idris』ゲームデザイン編【後編】歴史改変によって消えた世界の背景と、物語の最後を飾るボスの設計(談:三富リードナラティブデザイナー&河合リードバトルデザイナー)
今回は、2026年9月9日に配信が開始された拡張DLC『Mask of Idris』の魅力を紹介する開発者インタビューをお届けします。当企画の第4回は、ゲームデザイン編の後編として、探索の舞台となる「廃棄世界」の背景と、立ちふさがるボスの設計について、制作を担当した三富 瑠音リードナラティブデザイナーと、河合 康嵩リードバトルデザイナーに語っていただきました。
Q1.『Mask of Idris』に登場する、歴史の改変によって消えていった世界には、それぞれどういった背景があるのでしょうか。
三富:
本編でプレイヤーの皆さまが目にした歴史は、さまざまな出会いや決断、そして救済が積み重なった先にあるものです。『Mask of Idris』の廃棄世界では、そのうちのひとつが失われたことで、本編とは大きく異なる運命をたどった人々の姿が描かれています。そこに残された遺物や情景は、滅びた世界の名残であると同時に、その世界で誰かが生き、抗い、救いを求めた証でもあります。
ここからは、それぞれの世界で何が起きたのかを、少し掘り下げてご紹介します。
なお、本編および『Mask of Idris』の物語に関するネタバレを含みますので、ご注意ください。
【悪食の谷】

ライルがイモージェン・マクリーシュに敗れた世界が描かれています。本編では、ライルはイモージェンを討伐し、酸の谷の惨劇を食い止めました。しかし、この世界では死闘の末にライルはイモージェンに捕喰されてしまいます。その結果、誰もイモージェンを止めることができず、黎明の旅団の団員をはじめ、酸の谷に生きるあらゆる生命、そして実の息子であるクレイグまでもが喰らい尽くされました。

探索を進めると、血に染まったライルの上着や、真っ二つに折れたダガーを発見でき、彼がこの世界で迎えた結末がうかがえます。絶望的な状況となった中、誰がイモージェンに抗い、何が起きたのか……各地に残された痕跡から、いろいろな想像を巡らせていただければと思います。また、人としての意識を残しながらバケモノとして生きるイモージェンの絶望や苦しみについても、ご注目ください。


【暗闇の街】

双子を忌み子とする暴食の血族の掟によって、ハル・アンジューが娘のリーズを失った世界が描かれています。ハルは掟に背き、双子のジョゼとリーズを連れて血族を出奔したものの、追手からふたりを守り切れず、リーズが命を落としてしまいます。
街には、欠けた髪飾りや、傍らに並ぶ2つのベビーベッドがあり、そこからはふたりの娘を分け隔てなく愛し、一緒に暮らすことを願ったハルの想いと、叶わなかった家族の幸せを感じ取ることができるでしょう。我が子を奪った吸血鬼社会への憎しみと、失われた家族への執着を抱えたまま生涯を終えたハル。その思いは死後も消えず、廃棄世界を暗闇で覆う情念となって残っているのです。


また、この世界には、すべてを失い過去に囚われたハルを、最後まで支え続けたアンジュー家の侍女がいました。侍女は、かつて自分を家族として迎えてくれたハルが、再び以前のように接してくれることを願い続けましたが、その思いが報われることはなかったのです。娘を失ったハルだけでなく、彼女に寄り添い続けた者もまた、叶わなかった家族の姿を求め続けています。

【邪眼の森】

モニカ・アストゥリアスが、封印殻の中で苦しむ娘のホリーを救えなかった世界が描かれています。ホリーの情念によって呼び覚まされたモニカは、娘を救うためにあらゆる手を尽くしました。しかし、この世界では本編のような協力者が現れなかったため、彼女の願いは届かなかったのです。ホリーの封印殻はモニカの目の前で爆発し、娘だけでなく、家族との思い出が残る森までも失われてしまいます。
森に残された壊れたオルゴールは、血族に伝わる歌を奏でる、家族の思い出の品です。本編では過去を改変し、ホリーを救うための鍵となりました。しかし、この世界では音色を失い、その役目を果たすこともありません。そこからは、娘を救えなかったモニカの後悔と怒り、それでもなお消えなかった家族への愛情が感じられます。行き場のない怒りを抱えたモニカは、廃棄世界を訪れる者に対して、ホリーを救えるだけの力があるのかを問い続けているのです。


【腐った監獄】

ゼノン・グリフゴートが、のちに妻となるジビュレと出会わなかった世界が描かれています。本編では、ジビュレとの出会いによって愛と理解を得たゼノンが、知識と才能を正しく発揮し、現在の世界の礎となる研究を成し遂げました。しかし、この世界ではジビュレと出会わず、ゼノンは死への強い恐怖を抱えることになります。その結果、自身を含むすべての生命を死の運命から解放しようと、研究にのめり込んでいくのです。

この世界に残されたゼノンの眷属たちは、彼が求めた死のない生命を形にした存在です。全身を機械に置き換えられ、死を免れた代わりに意思と個性を失っています。彼らの姿は、生命を救うはずだった研究が、その在り方を奪うものへ変わってしまったことを物語っています。

同じ願いと才能を持ちながら、ジビュレと出会わず、親しい友人とも決別したゼノン。それにより、本編では世界の礎となった研究が、この世界では生命を脅かすものへと変わってしまったのです。


Q2.『Mask of Idris』で新たに登場するボスは、どのようなコンセプトでバトルデザインや攻撃モーションなどの制作が進められたのでしょうか。
河合:
「情念の主イドリス」は、「王としての威厳を感じられるボスにしたい」という想いがありました。本編でもイドリスという吸血鬼の始祖の存在は言及されていたので、「ついにその存在と戦うことができる!」というプレイヤーの皆さまの期待に応えられるようなボスを目指してデザインされています。

尻尾や炎の羽根、そして顔からは獣のような印象を受けますが、しっかりと威厳が出るように、基準姿勢は剣を担いでどっしりと構える姿にしています。どこかアンバランスさを感じるところも、情念によってゆがめられたイドリスの姿を、より印象付けていますね。

難易度設定としては、やはりDLCに登場する大英雄としての強さが求められたので、手ごわくしてあります。また、相対したときに、コンセプトの「王としての威厳」を感じられることも意識しています。
攻撃は、ダイナミックで広範囲に及ぶものが多い反面、動作後の隙は大きめです。そのため、危険を承知でアクティブに攻撃を仕掛けるほど有利になるような、ハイリスクハイリターンのバトルを楽しめます。イドリス自身も、自ら距離を詰める技をいくつも持っているので、互いにぶつかり合うような激しいバトルが展開することでしょう。


モーションとしては、大柄な体躯を活かして繰り出すダイナミックな攻撃と、炎を使った急加速攻撃が特徴的です。特に二度の疾走攻撃からダイナミックに飛び上がって叩きつける連撃技は迫力十分なので、これらの動作に注目しながら、このボスならではの駆け引きを味わっていただけるとうれしいです。


「儚き者たちの情念」もとい「ルゥ・マグメル」は、情緒を感じられるドラマチックなボスとしてデザインしました。ずっと主人公に寄り添い、共に歩んできたルゥと、ついに対峙することに……という、驚きと切なさを感じられるボスを目指しています。「よりルゥの存在を感じられるバトル」を重視して、ふたつの形態の制作を進めました。

まず、第1形態「ルゥ・マグメル」は、ハイスピードで迫りくる王道の近接戦闘ボスとして設計しました。ひたすら詰め寄ってくるボスと正面から向き合う、緊張感のある戦いを楽しんでいただけたらと思います。モーションとしては、斧を使ったダイナミックな攻撃と、レイピアを使った切れ味の鋭い連続攻撃が特徴です。これには、バディとしてのルゥのバトルスタイルを継承していることを、プレイヤーの皆さまに感じさせる狙いがあります。


すでにこのボスまでたどり着き、気づいた方がいたらうれしいのですが、戦闘中にルゥは主人公への攻撃をためらうことがあります。また、撃破時のモーションにもこだわっており、多くの情念に飲み込まれながらも主人公という光を想い続けるルゥの姿を表現しています。こういった演出から、改めてルゥという存在を感じ取っていただければと思います。

続いて、第2形態の「儚き者たちの情念」は、エモーショナルな状況から一変して、DLCを締めくくる最終ボスとして、怖さと美しさを一段と感じられるデザインにしています。蝙蝠による遠距離を狙った追尾攻撃や、炎をまとった羽衣によるテクニカルな範囲攻撃などを繰り出すようになり、非常に手ごわい相手となっているはずです。バトルが中盤に差し掛かった頃には大技も使うようになるので、激しい攻撃をしのぎ、こちらも強烈な一撃を叩き込む――そんなヒロイックなバトルを味わえるように設計しています。


主人公を掴む抱擁攻撃は、このボスの象徴とも言える技です。深い情念の炎をまとった身体では、愛しい相手に身を寄せても傷つけてしまう……存在そのものが持つ悲しい矛盾と想いを表現した技になっています。このジレンマが生む切なさを表現したい思いから、細部までこだわって制作しました。

全体としては、ハイスピードな王道バトルからオールラウンドの総力戦、そしてダイナミックなラストバトルへつながる設計で、手ごたえ十分の仕上がりとなっています。『CODEVEIN2』を締めくくる体験になればと、期待を込めて送り出したボスなので、じっくりと楽しんでいただけるとうれしいです!

最終回では、ストーリー体験への没入を高めるフィールドやボスの設計について紹介しました。
今回ご紹介した内容を実際のゲーム内でご覧いただき、拡張DLC『Mask of Idris』の物語への没入感をさらに高めてください!
ということで、拡張DLC『Mask of Idris』の開発者インタビューはこれにて終了となります。全4回を通して、新たに追加された舞台やキャラクターたち、主人公の新たな装備など、世界を形作るさまざまな要素にこめられた想いについてお届けしてきました。
本インタビューを通じて、作中では語られなかった開発者のこだわりや設定への理解をより深めていただけたのであれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。これからも『CODE VEIN II』の世界をお楽しみください!


